作成日: 2025年05月08日(木)
更新日: 2025年05月07日(水)
B2Bビジネスにおける検索広告は、従来のコンバージョン(資料請求やお問い合わせなどの成果)獲得だけでなく、ブランドや製品・サービスの「認知獲得」という重要な役割も担っています。
多くの企業が検索広告の効果を即時的なコンバージョンだけで判断しがちですが、特にB2B領域では最初の広告クリックから成約までの道のりは一直線ではありません。企業の意思決定プロセスは複雑で、複数の関係者が関与し、情報収集から検討、比較評価を経て最終決定に至るまでに数週間から数ヶ月、時には1年以上かかることも珍しくありません。
このような長期的な購買サイクルにおいて、検索広告は潜在顧客との最初の接点となり、認知フェーズからリード化(見込み顧客化)へと段階的に進めていくための重要なツールとなります。例えば、業界の課題解決に関する検索をしているユーザーに対して適切な広告を表示することで、そのユーザーを自社サイトに誘導し、そこで価値ある情報を提供することができます。
認知獲得を目的とした検索広告を展開する際の大きな課題は、「個々のキーワードが本当に役立っているのかをどう計測するか」という点にあります。従来のコンバージョン数やCPA(顧客獲得単価)といった指標だけでは、認知フェーズにおける効果を正確に把握することができません。
例えば、あるキーワードでの広告がクリックされてサイトを訪問したユーザーが、すぐにコンバージョンには至らなくても、その後のマーケティング活動に反応してコンバージョンする可能性は十分にあります。このような「種まき」としての価値をどう評価するかが重要です。
この課題に対する有効な指標の一つが「セッションあたりの平均エンゲージメント時間」です。これはGoogle Analytics 4(GA4)で計測できる指標で、ユーザーがサイト内でどれだけ積極的に情報を消費しているかを示します。
エンゲージメント時間とは、ユーザーがページを実際に閲覧している時間のことで、ブラウザのタブが開いているだけの時間ではなく、スクロールやクリックなどの操作があった「アクティブ」な時間を計測しています。つまり、ユーザーが本当にコンテンツに興味を持って読んでいる時間を反映しやすい指標となります。
ランディングページ(広告から最初に到達するページ)における平均エンゲージメント時間が長ければ、そのコンテンツがユーザーにとって価値あるものだったと判断できます。特にB2B領域では、製品やサービスに関する詳細な情報を提供するコンテンツが多く、真剣に検討しているユーザーほど滞在時間が長くなる傾向があります。
セッションあたりの平均エンゲージメント時間をキーワードごとに分析するためには、検索広告からの遷移時にURLパラメーター(URLの末尾につける追加情報)を与える必要があります。
例えば、「B2Bマーケティング効果測定」というキーワードで広告をクリックしたユーザーが遷移してきた場合、そのURLに「?keyword=B2Bマーケティング効果測定」というパラメーターを追加することで、どのキーワードからの流入だったかを識別できるようにします。
この設定により、GA4でどのキーワードからの訪問者がどれだけページに滞在し、どのようにエンゲージしたかを詳細に分析することが可能になります。
具体的な設定方法としては、Google広告のキャンペーンURLオプションを活用します。キャンペーンレベルまたは広告グループレベルで設定できる「トラッキングテンプレート」機能を使って、クリックされたキーワードを自動的にURLパラメーターとして追加します。
設定する内容は以下のとおりです:
この設定により、ランディングページのURL(lpurl)に自動的に「?keyword=○○○」というパラメーターが追加されます。ここで「○○○」の部分には、ユーザーが検索したキーワード(または広告のターゲットキーワード)が入ります。また、上の画像においては”adtype”というパラメーターを設定しています。これはGoogle広告以外にMicrosoft広告などでも同様の設定ができるため、広告媒体ごとの差分も集計できるよう設定しているものです。
※後述部でこの箇所も利用します
例えば、通常のランディングページURLが「https://example.com/landing-page」だとすると、上記の設定により「https://example.com/landing-page?keyword=B2Bマーケティング効果測定」というURLに変換されて広告が配信されます。
Google広告側で上記の設定を行ったら、次にGA4側での設定と分析を行います。
GA4の「レポート」セクションから「ユーザー獲得」→「トラフィック獲得」→「ランディングページ」と進み、「ランディングページ+クエリ文字列」を選択します。これにより、URLパラメーターを含めたランディングページごとのデータを確認できます。
ここで「セッションあたりの平均エンゲージメント時間」という指標を選択することで、各キーワードからの訪問者がどれだけ積極的にサイトを閲覧しているかを分析できます。
ただし、ここで一つ問題が生じます。日本語のキーワードがURLパラメーターになると、文字化けしたような状態(正確にはURLエンコードされた状態)で表示されることです。例えば「B2Bマーケティング」というキーワードは「B2B%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%82%B1%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%82%B0」のように表示されます。
このURLエンコードされたキーワードを人間が読める形に戻す(デコードする)方法としては、いくつかのアプローチがあります。
まず、オンラインの「URLエンコード・デコード」ツール(例:https://tech-unlimited.com/urlencode.html)を使用する方法があります。GA4のレポートから見つかったエンコードされたキーワードをコピーし、このようなツールに貼り付けてデコードすることで、元の日本語キーワードを確認できます。
しかし、多数のキーワードを一つずつ手作業でデコードしていくのは非常に手間がかかり、効率的とは言えません。特に、大規模なキャンペーンを運用している場合は現実的ではありません。
そこで、より効率的な方法として、AIツールを活用するアプローチがあります。GA4からCSVデータをエクスポートし、適切なAIプロンプトを使用してエンコードされたURLを一括でデコードし、Excel形式で整理するという方法です。
例えば、ChatGPTやClaude等のAIアシスタントに以下のようなプロンプトを与えることで、エンコードされたキーワードのリストをデコードすることができます:
添付で与えられる文字コードがutf-8で区切り文字がカンマのCSVファイルに対して次の作業を行う
- CSVファイルをxlmsファイルに置き換える
- 冒頭の9行を削除する
- 削除後の1行目に”キーワード”と”媒体”という列を列の最後に追加する
- 2行目以降の各行に対し、”ランディング ページ + クエリ文字”列にはURLの文字列があるので、この中からパラメーター”keyword”を切り出してデコードをし、”キーワード”列に貼り付ける
- 2行目以降の各行に対し、”ランディング ページ + クエリ文字”列にはURLの文字列があるので、文字が”msad”であれば”Microsoft”に、”googlead”であれば”Google”に置き換えをし、”媒体”列に貼り付ける
- 出来上がったxlsxを出力する
この方法を使えば、数百、数千のキーワードでも効率的にデコードして分析することが可能になります。
B2Bビジネスにおける検索広告は、直接的なコンバージョン獲得だけでなく、認知フェーズからのユーザー育成という重要な役割を担っています。セッションあたりの平均エンゲージメント時間という指標を活用することで、各キーワードの「種まき」としての価値を定量的に評価できるようになります。
この分析に基づいて、認知獲得に効果的なキーワードと、即時的なコンバージョンに効果的なキーワードを区別し、マーケティングファネルの各段階に適した広告配信を行うことが重要です。そして、そのためにはGoogle広告とGA4の適切な設定と、データの効率的な分析プロセスの確立が不可欠です。
認知獲得を最適化することで、長期的なリード育成の質と量を向上させ、最終的なビジネス成果につなげることができるでしょう。
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