作成日: 2023年01月14日(土)
更新日: 2024年06月11日(火)
B2B(BtoB)ビジネスでWebサイトを新設・リニューアルする場合に、何をまず考えていくべきか?その結果としてどのようなコンテンツ(ターゲットに見せたいページ)か、Webサイト全体の構成を考えていきます。多くはWebサイト制作会社やWebやデジタルマーケティングのコンサルタントなどと話をしながら進めることになるでしょう。しかし、Web制作やデジタルマーケティングの技術・戦術については制作会社やコンサルタントは詳しいですが、B2Bビジネス、特に業務に沿った知識や理解度は発注側の方が詳しくなります。ここでは、その制作会社やコンサルタントに話を投げかける前段階で、どう考えるべきなのかについて記載します。
まずはじめにB2B(BtoB)ビジネスでのWebサイトの役割を考えてみます。役割といってもこれはWeb制作を託された部門やプロジェクトチームの一存で決まるわけではなく、これは多様な要素によって決定されます。どのような要素で決定されるかは後述しますが、ここでは役割としての要素を紹介します。
1つ目の要素としては、「企業としての存在アピール」となります。当たり前のことをと思われる方も多いかと思いますが、B2Bビジネスですと特定の領域や既存の取引先に対して知名度があり、その他では認知されていないということが多いです。また、それで現状のビジネスとして大きな問題とならない(取引につながらない会社にしられることにメリットがそれほどないケース)ということもあります。まずは確固たる企業情報の提供をし(ドメインとしての .co.jp の利用など)、ターゲットとなる方への与信調査の最初の一歩となるようにすることもWebサイトの大事な役割となります。同じようなものとして、採用を行う中で社会的な信用を打ち出す(求職者にわかりやすく説明する)のも目的となります。
2つ目の要素としては、「カタログ」としての役割です。これはB2Bビジネスとして提供している商品・サービスについて一覧化されているようなWebサイトになります。カタログとして機能するには、ターゲットとされる方にとっては馴染みがある(商品・業界知識がある)ような商品・サービスであることが多いです。イメージとしてはスペックなどが明記しやすいタイプの商品・サービスで、他社や自社の類似商品・サービスと比較がしやすいようなものであることが多いです。その他に、カタログであることの理由として、その場(オンライン内)で購入までの意思決定につながるわけではないものであるとか、営業などのセクションがクロージングに向けて別途動くようなケースではカタログとしてのWebサイトが採用されることが多いです。
3つ目の要素としては、デジタルマーケティングのプラットフォームとしてのWebサイトです。厳密には先述の「企業としての存在アピール」であるとか「カタログ」としてもデジタルマーケティングのプラットフォームとしての要素は持たせることはできますが、Webサイトへの訪問(リード獲得)から提供商品・サービスへの理解を深めてもらい(ナーチャリング)、商品・サービスの購買の決定をしていただくための諸施策を盛り込んだWebサイトとなると上記2つの要素とは異なる部分が多いので別のものとた方が、考えが整理しやすくなります。
Webサイトには役割はあるのですが、それは時間の経過と共に変化していくものになります。直近であれば、新型コロナウイルスに伴うコロナ禍における営業手法の変化です。営業マンをベースとした直接コンタクトを中心にした営業手法が展開しづらくなり、デジタルマーケティングからの顧客獲得を目指す流れが加速しました。(もちろん業界や手法にもよりますが、デジタル化が加速したのは事実だと思われます。)
コロナ禍のことは別としても、実際世の中の進展と共にWebサイトの役割は変わっていくでしょう。また、それはWebサイトや周辺の技術的な発達もありますし、Webサイトを制作するビジネスとして動機にもよります。Webサイトの制作段階でどこまでを想定するかはありますが、この数年くらいでのビジネスの変化なども見越して経営層や各部門の責任者などにヒアリングをしていくことも求められます。
一般的なB2C(BtoC)とB2B(BtoB)とで、ビジネスの構造として異なる部分があり(似てる部分もありますが)、そこがサイトの構造を決める部分が大きくなります。ここではWebサイト制作やデジタルマーケティングを進めていくにあたり、B2Bビジネスの構造を考えていく要素をあげていきます。
まず営業のプロセスとして理解する必要があります。このあたりはB2Cでも高単価の商材・サービスであると似通っている部分もありますが、異なる部分も多いです。
まずは知ってもらうことになります。デジタルマーケティングとかであればリード得る部分です。これはオフラインの営業であれば、テレアポやノーアポでの訪問もあれば、展示会などへの出展、または名刺交換や知り合いづての紹介などになります。
次に商材・サービスへの理解を深めてもらうことになります。デジタルマーケティングですとナーチャリングのプロセスとなります。オフラインの営業ですと、初回訪問以降のヒアリング・提案などの段階でしょうか。またはまだ検討段階での情報共有などのこともあります。
最後に企画や見積の作成から受注への流れになります。ものすごく簡単に説明をしておりますので、異なる部分は多いかもしれません。ただ重要なことがあり、多くのB2Bビジネスですと、知ってもらうことから受注までの流れの中に数多くの登場人物が現れるということがあります。この数多くの登場人物に対して適切な情報提供を行いながら、受注への意思決定を行っていくことがB2Bビジネスにおける営業の勘所となります。
次にB2Bビジネスですとよく言われる”チャネル(営業チャネル)”という言葉があります。これは、どのような窓口を通じて営業を進めていくかというものです。この場合、1つのチャネルで営業を行う企業組織、商材・サービスもあれば複数のチャネルで営業を進めていくことも多いです。このチャネルごとの特性を知っておくことも重要です。
1つのチャネルとして”直販”チャネルがあります。直販チャネルは自社や組織の営業パーソンが中心になり、初回のアポを取るきっかけづくりからクロージングまでを自社内で完結させます。自社の統制下において営業を進めますので合理的・効率的に行われることが多いとされます。一方で、自社の営業を中心としたコミュニケーションのネットワークが活動のベースとなりますので、日本全国に商材・サービスを展開したい場合などは全国に営業の支店や人を設置してとなりますのでコストがかかります。
もう1つのチャネルとしては”代理店・紹介”チャネルとなります。これは、直販チャネルであった営業のネットワークを広げるコストを代理店などを挟むことで広げることができるようになります。一方で代理店営業として代理店向けの営業を行っていくことや、代理店同士での顧客のコンフリクトなどもあるので異なる課題をもつことにもなります。直接営業(直販チャネル)と関節営業(代理店・紹介チャネル)はそれぞれ一長一短なものとして理解するといいでしょう。
その他にも直販でもデジタル(オンライン)のみというようなケースもありますが、恐らくこの記事を読む方はそのようなケースではないと思いますので割愛します。細かく考ええれば幾つかチャネルはあるのですが、まずは大別して”直販”なのか?”代理店・紹介”なのか?みたいなことを意識しておくことが必要です。また、それに応じて作るコンテンツの粒度などにも影響してきます。
商材・サービスの販売単価というのもB2Bのビジネスを理解する上で重要な要素です。商品・サービスの単価ではなく、販売や発注時の単価が重要になります。なぜならば、一般的に法人の購買(発注)についてはその金額に応じて決済可能職位上の取り決めがされていることが多いからです。
販売(発注)単価があまり高くない場合、Webサイトとしては商品の紹介や競合商品・サービスとの比較が可能であるだけでなく、ECサイトへの導線や直接購入可能にできるような流れを構築しておくことも良いかもしれません。デジタルマーケティングを中心に集客から購買まで一貫してWebで完結させることで全体的な販売コストを抑えるというよな目標を持っても良いです。
一方で販売(発注)単価が高い場合、商品の採用から発注(決済)にいたるまで数多くの人の目にWebサイトが触れられます。例えば、担当者は商品・サービスを探し、担当者とその上長は商品・サービスの比較と企業の簡易な与信確認を行う。法務部や余震調査部門が、その会社を調べるきっかけとする。経営層(部門長や役員レベル)がそれらの情報を基に決済をする。これらの人々が全てWebサイトを訪れる可能性があり、それぞれの立場ごとにそのWebサイトで知りたい情報は異なるということを考える必要があります。
商品・サービスが有形なのか無形なのかというのもWebサイトの構成を考えていく上で重要なものとなります。
一般的に有形なものとすれば商品(商材)となりますが、商品の場合そのスペックについて詳細かつ具体的に記載することが可能です。そのため、Webサイト上で個々の商品(商材)について詳細に見ることができることや、比較可能な表現をすること、使用例などを表示することが重要になります。また、商品(商材)アイテム数が多くなる傾向になりやすいので、商品へたどり着く導線としての設計が重要になってきます。
無形なものとすればサービスとなりますが、サービスの場合はどうしても説明が抽象的になっていく傾向が強くなるので、どのように理解しやすい表現にしていくのかという課題があります。一番は数値で表せられる部分を増やしていくということですが、そうでない場合は”ユーザーインタビュー”などを設けることで訪問者の理解度を上げていきます。
次に、Webサイトの構成を決める上で見落としがちな部分ですが、Webサイトと自社の営業・マーケティングの噛み合わせについてです。
はじめに強く意識すべきことになりますが、Webサイトを訪問する前後のプロセスについて考察することです。Webサイトの訪問するのは、発注(購買プロセス)や求職(採用プロセス)でどのタイミングなのか。それは1度ならず複数のタイミング・プロセスで発生しますし、その都度目的は異なることも考える必要があります。また、Webサイト訪問前のプロセスや、訪問後のプロセスへの関与者が自部門以外の人間であることを考え、それぞれ適切な情報提供の仕方を検討することも必要です。
Webサイトの前後を意識するということは、発注(購買)のプロセスであればマーケティング全般に関連することにもなります。そのため、単純にWebサイトを作るという視点から脱却して、プロセス毎に「目的」「ゴール」「ステークホルダー」「後続のプロセスへの影響」などを確認して構成を検討します。Webサイトを制作するに必要な作業というのも多々ありますが、この制作前の情報整理(と言えば簡単に聞こえますが)をしっかり行えるかがWebサイトの機能における違いを生み出します。
Webサイトの前後に関連することではありますが、各プロセスにおけるステークホルダーへの配慮をどう考えていくかも重要になります。例えば、販売において代理店や紹介の制度を入れている場合、代理店や紹介者にどこまでの機能を期待するのか?その機能としてWebサイトを活用する(少なくとも代理店・紹介者経由の方はWebサイトを見る可能性は高い)、またはコンフリクトを起こさないようにしていくにはどのようにWebサイトの構成をすべきなのか?これらを事前に検討しておく必要があります。もちろん、全てに対応できるのが理想ですが、どうしても全てのステークホルダーに対して万全な内容とすることは難しくもあります。かと言って、無難にWebサイトを作ると「何が伝えたいのか分からない」「Webサイトを見てもなんだか」なものになりがちです。営業やマーケティングの責任者レベルと事前にWebサイトの構成やそれに伴うコンフリクトを起こす部分について合意をしておくことも重要になります。
B2B(BtoB)ビジネスにおけるWebサイトの構成は業務理解が必要となります。制作前の事前の準備も含めて計画的に進めていくことが肝要です。
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